2019ゴールデンウィーク九州ツーリング<4日目>

四日目、アラームが鳴る前に目が覚める
窓から通りを見下ろすと、道行く人は傘を差していたり差していなかったり
着替え等を済ませ、まずは朝食へと向かう
ホテルには素泊まりでの滞在だったので、近所のイートインのあるパン屋に入った
地元のパン屋さんといった感じて、特に観光客向けの商売をしているわけでもなさそうな店だった
丸一日スケジュールに縛られないおかげで、「折角旅行に来ているのだから、地元の名物を食さねば」という脅迫観念からも解放され、非常にリラックスした朝を迎えることができた

熊本市内から日帰りで行ける観光スポットはいくつかあったが、そもそもは休養のために予定を変更したのであって、観光で疲れてしまっては本末転倒ということで、徒歩圏内の場所に絞ることにした
しかし、それがなかったとしても、熊本市に来たならば何はなくともまずは熊本城であろう
予定外の熊本滞在であったために、下調べはほぼ無しであり、修復中の熊本城はどの程度まで見学が可能なのかも把握しないまま、とりあえず観光案内の施設があるらしい「桜の馬場 城彩苑」へ向かった
ホテルから城の南西側を流れる天然の水堀たる坪井川に沿って歩く
加藤清正公像が鎮座している対岸、馬具櫓という建物を支えている石垣が、抉れるようにして崩れているのが見て取れた
400年間様々な戦火の中にあっても形を保ち続けた石垣が、呆気なく崩されてしまう、先の地震の威力や如何ばかりか、と思わせられる
(実際には、明治に起きた地震で一部改修されているらしい)
崩れた石垣を横目に城彩苑に入ると、城内の見学は制限されているのにも関わらず、多くの観光客で賑わっていた
土産屋や飲食店なども多数あり、まずはどこから回るべきか、というところに、ちょうど数分後にわくわく座という展示館のような施設で、熊本城VRなるものの上映が始まるということで、入館料300円を払って入館する
VRと銘打ってはあるものの、個別にヘッドマウントディスプレイを装着するようなタイプではなく、大きなスクリーンに熊本城の全体図が映り、自由に視点を変えたり拡大縮小、ときには江戸時代の城の状態に形を移したりしながら、解説を聞けるという物だった
映像を流していたりするだけよりかは、情報が頭に入ってきやすいかもしれない
その後は人形劇(の映像)や寸劇などがあり、多少子供の学習用に近い印象もあったが、300円分としてはこれだけでも十分なものだった
下階にはその他模型等の展示もあり、震災直後の被害の映像なども流れていた
当時に比べたら確実に復興が進んでいる印象はあったが、それでも完全に復旧するのは2038年という計画になるのは、費用の面、人手の面ももちろんあるとは思うが、やはり加藤清正の改築より400年の歴史を持つ文化財としての価値を損ねずに、となると、どうしても仕方のないことなのだろう
一通り見て回った感想として、完全に修復が完了したときには再訪したいと思わせるだけの展示であった

案外、長い時間をわくわく座内で費やし、城彩苑内にある店を見て回る
私はピンバッジの収集をしている(といっても非常に緩く)のだが、当然熊本城ほどの観光スポットなら城をかたどったピンバッジくらいあるだろう、などと考えていたのだが、まったく見当たらない
マグネットやキーホルダーは目に付くが、ピンバッジは取り揃えている種類が少ないうえに、ほとんどがくまモン物である
やむを得ず、熊本という土地と、2019年という時期が見てわかる、2019年ラグビーW杯にちなんだラガーマンのユニフォームを着たくまモンピンバッジを購入した
他には赤牛の串焼きを味見とばかりに買い食いしてみたり、なにやら国際機関から三ツ星を与えられたという「ASO MIKL」なる牛乳を飲んでみたり
酒蔵では地酒の飲み比べができるということで、T君は迷った末に注文していた
腰を据えて飲むという感じではないものの、昼間から酒を入れられるのも、休養日を設定した恩恵かもしれない

土産屋では一番目立つ場所に地元のラーメン屋の土産用ラーメンが置かれており、店員が観光客に薦めていた
ちょうど昼時にさしかかっていたので、昼食は何を食べようと思案していたところだったので、それならばとラーメン屋「黒亭」の実店舗へ向かうことにした
少し並んで入店、玉子入りラーメンというのを注文する
生卵の卵黄がふたつスープに浮かんでいて、ノーマルのラーメンとどちらにしようか迷ったが、これは玉子入りにして正解だった
レンゲの上で溶いた卵に麺をつけて食べるとこれが美味い
スープの表面にドロッとした豚の背脂が浮いているような、いわゆる濃厚さを売りにしたラーメンはどちらかというと苦手なのだが、ニンニク油の風味と生の卵黄が合わさったこのラーメンの濃厚さは全く問題なく受け入れられた

腹に物を入れた後は、まだ他にも観光スポットへ向かうという選択肢もあったが、やはり体を休ませたいということもあって、諸々の必要品を購入しつつホテルへ一度戻った
少し仮眠してから、ホテルのフロントで教えてもらっていたコインランドリーへ向かうことになった
ホテルから10分ほどの場所のランドリーだったのだが、到着してみるとすべての洗濯機が埋まっており、さらにその後を待っている客がいるという混雑具合
10連休だからこその長旅の客の利用が多かったのだろう
どうにかならないかとスマホをいじると、現地点からさらに10分ほどの場所に別のコインランドリーがあるとの情報が
果たしてほとんどレビューのないGoogleマップ情報を信じていいものか、と思案しながらも、ただ待っているだけよりマシと地図の指し示す場所へ向かうとこれがビンゴ、確かに存在したコインランドリー内には洗濯機の空きがあった
とりあえず洗濯物を投入
洗いよりも乾燥に時間がかかると考え、乾燥機に移してから夕飯に向かうことにして、しばし待つ
その間にどこぞにでかけていったT君は、件の「ヒライ」で何やら買ってきたようだった

30分ほどで洗いは完了し、乾燥機に硬貨を投入した後に向かったのは「壱之倉庫」というレストランだ
店名のとおり倉庫を改装したような天井の高い店内で、赤牛丼を食べた
肉を食っている!という感じの焼き加減レアの赤身肉は満足感があった
店が「ビアレストラン」と自ら銘打っているだけあって、T君が赤牛をつまみながらビールを飲んでいるのを見て、酒を飲まない私でも「ビール美味そう・・・」と思ってしまった

コインランドリーに戻り洗濯物を回収する頃にはまた雨が落ちてきていた
まだ浅い時間だったが、もう一軒とはならず、次の日に備えて早めにホテルに戻る
改元の瞬間はちゃんと屋根のある寝床で迎えられることを感謝しながら、風呂やら着替えやらをすませて、あっという間にベッドに寝転がる
そのまま眠くなるまでダラダラするのみかと思われたが、目ざといT君がまた何かを発見してきた
ホテルで映画DVDの無料貸し出しサービスがあるというのだ
というわけで、平成最後の緊急映画鑑賞会が開始された
チョイスされたのは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」というスーパー名作
九州旅行に来てまでわざわざDVDを見なくても・・・という人もいるかもしれないが、変な義務感で無理に観光スポットを回るよりも有意義な時間の使い方である気がする
話は変わるが、最近はやりの「応援上映」、私はまったく食指が動かない
わざわざ映画館に行かなくても、こうやって友人とツッコミを入れながらテレビでDVDを見たほうが何倍も楽しいしリラックスできると思うのだが・・・
ちなみに映画鑑賞中に、T君が「ヒライ」で買ってきた「ちくわサラダ」を食べさせてもらったが、衝撃の美味さだった
いや、単純な味の良さよりも、「ちくわの穴にポテトサラダを入れて揚げただけ」のように見えるソレの、おかず・つまみとしての完成度に驚いた
もしも自宅の近所に「ヒライ」があったら週4、5本は消費してしまう気がする
DVDを見終ったのは23時過ぎ頃
その後はテレビで改元関連の特番をザッピングしながらすごした
日付が変わるのを見届けて就寝
おそらく多くの日本人がそうであったのと同じように、改元の瞬間は特に何の実感も伴わなかった
だが、時を経て振り返ったときに「そういえば令和に変わる瞬間は熊本のビジネスホテルで迎えてたんだよな~」と思い起こすときが来るのだろうと考えると、ただ家でダラダラ過ごしているよりも、連休を目いっぱい使って出た旅に、別の意義が一つ加わったような気がしていた