2019ゴールデンウィーク九州ツーリング<1日目>

弱い雨の中、環八沿いのマクドナルドで待ち合わせ
先に到着し、待っている間にルートを確認する
案の定、東名は横浜町田あたりまで渋滞が発生しており、ナビは中央道に変更することを勧めてきた
ナビの言うことを信じれば、中央道の方が、30分ほど早いということだったが、にわかには信じがたい
時間に余裕がないわけではないので、大人しくナビに従うか、すり抜けを辞さず東名を行くか、要相談だな、などと思っていると、T君から15分ほど遅れるとの連絡が
マクドナルド店内で朝マックでも食べつつ待とうかと思っていたが、ちょうど雨も止んできたのでそのまま駐車場で待つことにした
だが、15分を過ぎてもT君はなかなか現れない
あとでわかったことだが、海外赴任から帰国して、新居に引っ越した際に雨具をどこにしまったかわからなくなってしまったとのことだった
そんなT君を待つ間に、ああでもないこうでもないとルートを思案していると、ちょうど彼が姿を見せたときには東名に乗ってすぐの渋滞は解消したようだったので、予定通り東名をいくことになった

天気はといえば、しばらく雨が降ったり止んだりの微妙な空だったが、足柄あたりで雨粒が大きくなってきたのでSAに入り、そのタイミングで朝食を取った
どうやら昼頃には晴れ間が見えるとの予報で、天気が変わるのが先か、我々が雨雲を抜ける世が先か、といった感じで、休憩もそこそこに先を急ぐ
次の休憩、牧之原SAに付く頃には青空が顔を見せ、高速沿いの茶畑に映えて気持ちの良い景色だった
私には正直言うとなんてことのない風景だったが、帰国してから最初のロングツーリングだったT君は、しきりに感動の声をインカム越しに上げていた
牧之原SAではふたりともお茶のソフトクリームを食べた
普通の抹茶味とはまた違ったコクがあり、なかなか美味しかった
ここからは天気も崩れることはなさそうだし、気持ちよく高速移動できるな
…などと考えたのは大きな間違いだった

我々を待ち受けていたのは地獄だった
その地獄の名前は、「強風」である
誇張無く、これまでのツーリング経験の中で、最大の生命の危機を感じるレベルの風に襲われてしまった
風の強さがピークを迎えたのは豊田JCTから伊勢湾岸道路に入ったあたりである
そこまでも70~80km/hに速度を抑え、なんとかハンドルを握って走っていたが、もはや横風による規制の50km/hでもまともに走れないどころか、停止状態でも油断すると横倒しになってしまいかねないレベルであった
この状態できることはマスツーリングを放棄し、各が倒れずに走ることのみに最大限の注意を注ぐことだけだった
そして、命辛々、なんとか二人とも無事に刈谷PAまでたどり着くことができた
一歩先に到着していた私だったが、T君を待つ間、足の震えが止まらなかった
体にずっと力を入れていたせいもあるだろうが、ほとんどは恐怖によるものだったと思う
刈谷で天気予報を見ると、夜になればある程度風も弱まるということだったが、流石にそれまで待っているわけにはいかない
高速をいったん降り、東名阪に乗り直して迂回することも考えたが、そちらで風が吹いていないとは限らない
最終的には腹を決め、注ぎうる限りの集中力をもって、伊勢湾岸を進むことにした
結果、なんとか無事に大阪までたどり着くことができたのだった

さて、実は大阪を通過するに際して、我々にはかねてからの関心事があった
大阪府吹田市万博公園内にある映画館・109シネマズ大阪エキスポシティ
この映画館は、現時点では国内唯一、次世代レーザーIMAXシアターのスクリーンを有している
平たく言うと、巨大スクリーン、高解像度、高色彩(という言葉があるのかは知らないが)の上映システムだ
2017年にスターウォーズEP7が公開された際、他の劇場ではアスペクト比をスクリーンに合わせるために画面の上下がトリミングされており、完全なEP7を見られるのはエキスポシティだけと一部で話題になった
そして、この週末はアメコミ映画の超大作、アベンジャーズ/エンドゲームの公開週であった
そのため、これは大阪通過時にエキスポシティでエンドゲームを見るしかない!ということになっていたので、席を確保してあったのだ
実際に刈谷でその後の進路について相談をしていたときは、映画のことはほぼ諦めていたが、無事にたどり着いた頃は、まだ本編開始にギリギリ間に合う時刻だった
逆に言えば、もともと3、4時間ほどの余裕を持って組んでいた予定が、強風によってそこまで吹き飛ばされていた、ということでもあるが…
やはり、旅行はどんなに備えたつもりでも想定外の事態が起こるもの、という心構えは必要なのだろう

映画自体には間に合ったものの、それがギリギリの時刻だったことで、さらに余分なトラブルを付け加えてしまうことになった
映画の感想については省略するが、上映終了後、上がっていた私のテンションは、バイクのキーがなくなっていることに気が付いたところで見事に急降下した
その後は鑑賞時の座席に戻り落ちていないか見渡す、エキスポシティの総合案内に問い合わせて届け物がないか確認する、駐車場に戻ってバイク周辺に落ちていないか探す、などを繰り返したが見つからない
T君が映画館を再度確認してくれている間に、自分はもう一度辺りを探すために駐車場に戻ったところで、縁石の上にちょこんと置かれた鍵が目に入った
明らかに人が置いたものだった
鍵を抜いて、ポケットかなにかに入れたつもりがそのまま駐車場に落としていったに違いなかった
おそらく誰か親切なライダーが無くならないように避難させておいてくれたのだろう
結果を見ると探索のために無駄な労力と時間を浪費しただけのはずだが、駐車場に戻る間に財布の中身の大半と引き換えに鍵屋を呼ぶことまで考えていた私のテンションは、鍵を発見したことで、なぜかずっと楽しみにしていた映画の鑑賞後よりも高くなっていた
その後、予定の一時間遅れで宿にチェックイン
鍵紛失騒動のせいで夕飯もまともに食べられず、T君にはコンビニ飯を強いてしまった
この失態を翌日以降に挽回できるか
強風に晒されてかちかちに固くなった体をさすりながら、様々の出来事で未だ動転している状態の頭を、この日はなんとか無理やり枕に横たえるのだった